山の頂に樹氷が見られる季節になった。
暑いときは寒い方がましと思い、寒くなればなるで暑い夏の日が恋しく思う。
4月に入った新人二人は本川での冬は初めて。四国のチベットと揶揄される寒さを
どんなふうに迎え入れるかちょっと楽しみだ。
僕も40年ほど前にこの地に移り住んだ。その頃は今と違ってもっともっと寒かった。
マイナス18度まで下がった日に山に入って、間伐作業をしたこともあった。
さすがに木はカチカチに凍って、氷を伐るようなものだった。当時は今のように、靴も
靴下も手袋も服も耐寒性がなかったので、手足がちぎれるほど痛かった。
そんな寒い日に仕事をしなくてもよかったのだろうが、元来の天邪鬼な性格からか、人の
休むような日に働くことに優越感みたいなものがあったのだ。
それに、暖かいところで生まれ育ったせいか、雪国に憧れのようなものがあって、奥深い
森に入って、降り積もった雪や大きなツララを見ることに、この上ない幸福感があった。
話は随分逸れたが、新人二人が寒さを楽しめる冬になることを願って今夜は筆をおこう。