「高きを悟りて俗を語れ」とは芭蕉の言葉。
地拵え・植え付け・草刈り、その繰り返しを40年近くしているが、
林業の高きを悟る道のりは程遠い。
振り返ってみると、昨日より一本でも多く植えること、昨日より広い
面積を刈ることだけを優先していた。どうしたら植えた木が喜ぶか、
気持ちよく育ってくれるか、一本一本よく見ていたら違った結果になっ
ていただろうに。今までもったいない時間を過ごしたものだ。
と、同時に彼らには済まないことをしたとの思いがよぎる。
40年でやっと今の境地。
残りの人生でどこまで「木のこころ」に近づけるだろう。
蜃気楼のように近づいた分だけ遠のいていくのだろうか。
宮大工棟梁、西岡常一著
「木のいのち 木のこころ「天」」
これを読むと無駄な木は一本としてない。
それぞれの地に縁あって根付いた木を、活かすも殺すも心がけ次第なのだ。