草刈り機が普及する前の下草刈りは、柄の長さが90センチくらいで
刃渡りが45センチの手鎌だった。それで刀のように斜めにバッサリ
切るのだ。それでも草刈り機よりも広い面積を刈っていた。
燃料や機械の重さもなく、若さゆえの勢いもあった。
今日はこのくらいの面積を刈ったので幾らになったと、それだけが働き
甲斐の日々。鬼のような形相でがむしゃらに刈っていたので、当然苗を
誤伐する。一日に5本~10本くらい誤伐していただろう。
ただ、苗木の小さいうちは半分くらいの高さで誤伐しても、残った枝が
持ち上がって来て主軸になるので成長は少し遅れるが枯れることはない。
と、苗木を切るたび心のなかで理(ことわり)を言っていた。
あれから30年。体力面で面積こそ広く刈れなくなったが、草刈り機の
一振り一振りが愛おしく思えるようになった。ゆっくり草刈り機を振ると、
繁茂した草のなかの苗木がよく見える。誤伐も減ったし何より苗木の成長
だけを考えて余裕をもって作業をするので、精神面にもよろしい。
これが「道を極める」と言うことか!
なんて思ったりしている自分の顔は鬼から仏になっただろうか。