生きているからこそ

枕草子のなかで「夏は夜や月のころもいい」と綴っているが、それ以外に

僕は暑い暑い夏の昼下がりも好き。

 

板の間で昼寝をしていると、蝉しぐれがピタッと止み、いきなりさだちが来て、

濡れた土の匂いが家のなかに漂ってくる。その時の土の匂いがなんともいい。

また、庭木の枝影が板の間に落ちて、影を揺らすのを見るのもいい。

夏場のしんどい山の作業を忘れさせてくれるひと時だ。生きているからこそ

こうした歓びを感じることが出来る。

 

と言うのも昨年、下草刈り作業中に急斜面から転落して頭をしこたま打った。

生きているのが不思議なくらいの事故だったが、なんとお医者さんは「どこも

異常がないから明日から仕事に行ってもいいですよ」との冷たいお言葉。

せっかく救急車で運んでもらったのに・・で一日だけ休んで復帰。

 

今でも時おり首筋は痛む。この痛みを感じるとき、見るもの聴くものすべてが

今までよりもより深く沁みてくる。

生きているからこそ・・